原子の中の電子は、惑星のように決まった道を回ってはいません。わかるのは「どこで見つかりやすいか」という確率だけです。水素原子の波動関数から、電子の位置を1回ずつ測定するように点を打っていくと、軌道の形が浮かび上がります。
曲線は理論値、棒は測定した点の分布。測定を重ねるほど棒は曲線に近づきます。破線はボーアの模型での軌道半径 n²a₀。
英語の orbital は「軌道」と訳されますが、正体は波動関数 ψ です。その絶対値の2乗 |ψ|² が、その場所で電子が見つかる確率の密度を表します。点の濃いところほど、測定したときに電子が見つかりやすい場所です。
n はエネルギー、l は形、m は向きを決めます。波動関数がゼロになる面を節と呼び、球面の節が n−l−1 個、平面や円錐の節が l 個あります。色分けをオンにすると、節をはさんで ψ の符号が入れ替わるのが見えます。
エネルギーの違う2つの状態を重ねると、確率の雲が時間とともに行き来します。その振動数は原子が出す光の振動数とちょうど同じです。1s と 2p の重ね合わせの揺れは、波長 121.6 nm の紫外線(ライマンα線)に対応します。
非相対論的なシュレーディンガー方程式の水素原子の厳密解を使っています。ここで見ているのは実数の軌道関数(化学の教科書の px, py, dxy など)です。点はそれぞれ |ψ|² に従う乱数から選んだ「1回の位置測定の結果」に相当し、電子が実際にその点を通って動いているわけではありません。重ね合わせの揺れは、実際には約 10⁻¹⁵ 秒の周期のものを大きく引き延ばして表示しています。